冬の使者は春の使者になり、本州から蝦夷地に戻ってきた。
外にでると、白鳥のにぎやかな声は聞こえる。
白鳥たちは、田んぼでどろんこになって食事をしている。今年も家の真上を飛んでくれるだろうか。白鳥たちの、飛んでいるときは、折りたたみ羽毛に隠れている脚が時々、チラリとはみ出るところ、着陸時につんのめってしまうところ、「あ、よいしょ。あ、よいしょ。」とどうしても声をかけてしまう歩き方は、かわいくてならない。しかし翼開長2mからの羽音の迫力は、息を呑む。真下から白鳥をまた見たい。北上するまでの約2週間、どうかわが家の真上を飛んでくれますように。
冬は、終わろうとしている。思う存分過信せずに愉しみ、春を迎えるられそうだ。
あと12日で「秘密の森」の門はあく。行きたい。「もうひとつの秘密の森」では、「相生の朴の木」の定点観察をつづけている。6年目になるのか。ずいぶん幹は太くなった。よほどの悪天候ではないかぎり、冬中「相生の朴の木」の場所には通っていた。
まだ根雪はたくさんあるが、そわそわがとまらない。
今年は、去年種を蒔いた「朴の木」の苗木の鉢増し、そして造園業のA氏に発注し「オヒョウの木」を迎える。蝦夷地に自生している木を迎える。整地_される前の、この敷地にも生えていたかもしれない。そういう木々たちを迎えたい。「秘密の森」と「もうひとつの秘密の森」の観察をやめない理由だ。
蝦夷地に間借りして10回目の冬をこえる。
ひと区切り。だがまだまだ庭づくりは終わらない。木を植えたい。もっと木を植えたい。
この日、十勝岳はいつもにも増して噴煙をあげていた。