初めてのハグを

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思わず走っていってハグしてしまった。


この冬はとにかく荒れる日が多い。
猛吹雪もあれば晴れて青空なのに地吹雪の日があり、高台の強風の場所で育った私には暴風だけではなく、雪が伴う「視界ゼロ」の世界の経験値を上げるべくこの地に住んだのかもしれない。
眺めがいいということは、まわりに風を遮るものがほとんどないということで、それはそれほど高台でもないがすでにここに住んでから6度ほど陸の孤島と化したことで、より覚悟し納得できたので、数百メートル離れたお隣さんに助けていただくようになっている。

以前は道路に出るための雪の壁を「開けゴマ」するのに半日かかった。主人は、会社から帰ってこれなかったのでもちろん一人で雪かきをした。
「何事も経験」で「こういうものだ。道民さんたちは、こういう冬をいくつも乗り越えてきたんだ。もちろんアイヌの人々もだ。」とその気持ちは今も変わらない。

猛吹雪が終わって晴れ渡る翌朝、風除室のガラス戸は雪で埋まり固まり開けるまで格闘しさらに外に出たものの、多いところでは腰の高さにもなろうというガチガチに固まって圧雪された雪でたった40mほどでも歩くのがままならない。それでも、なんとか道路のところまでたどり着くとそこには夜明け前に除雪車がかいた雪でできた1mの雪山の壁がありとにかくそこ登り、お隣さんちのトラクターの音が微かに聞こえたのをきっかけにお隣さんが見えるところまで行き手を振り「雪かきお願いできますかー!」と大声で叫んでみた。すると間髪入れず「こっちが終わったら行っちゃるよー!」と返事が返ってきた。お隣さんはあっという間に460馬力のトラクターにつけた「リアバケット」こと「バケツ」でちゃっちゃと片付けたと思ったら、ちょっとでも油断すると滑るのでそろりそろり歩いていた私に追いつき「乗りなー!」といい、私は喜んでそのバケツに初めて乗せてもらい、初めての高さから見るその景色の美しさと感謝の感情が湧いてきて「わー! きゃー! ヒョー! スゴーイ! 」と歓喜しながら「わたしも重機の免許を取る!」と本気で思っていた。あの高さから見る景色の開放感は、また違う開放感で、決して忘れない。
ほんの少しでも見る位置を変えるだけで、別世界となる。これもすべてに言えることのひとつだろう。
うちの前に来るとそのお隣さんは「こりゃ、無理だわー!待っててね!」と言ったそばからひとかきでスノーダンプ何十杯分もの雪を一気にかいていく。そのバケツに入った雪の重さでトラクターの前輪が浮かんでしまっても慣れた感じで「ドスン」と音を立てながら前輪が元に戻るのを確認しながらどんどん雪をかいては捨てまたかいては捨てていく。その光景は、もう「圧巻」と「天晴れ」と「カッコイイ!」しかでてこず、結局人力だったら何時間もかかる雪かきが10分ほどで終わってしまった。

雪かきが終わりトラクターから降りてきたお隣の“奥さん”に思わず、走って行ってハグしてしまった。

すると、その奥さんは「こーんなに喜んでくれるなんて! 私、生まれて初めてのハグされたわよー!」と、涙ぐんでしまったのをきっかけに私もつられてしまった。さらに「今までどうして雪かきのこと言ってこなかったのー?」という問いに「こういうものだと思ってたから。なんでも経験して実感して、しっかり納得してから頼もうと決めてたのよ。北海道の人は、こういう冬を何度も乗り越えて来たんだもの。」というとさらに涙をこぼす奥さんだった。
実は私たちのほかに、もうひと家族移住して来たがひと冬で断念し内地へ戻って行った。そういうこともあり、私たちにどう声をかけていいのか、会えば話はするものの心配もしてくれていたものの、そのきっかけがなかったと言う。ここに住んで4年目の今ままで、私たちと色々な話をしたかったらしいのだ。
その奥さんはまさに「男勝り」で高知でいう「はちきん」なのかもしれないが、おだてには乗らないとっても純粋で綺麗すぎる心を持っていて、とても心地良いかたで、そのお宅ではこれまた可愛い猫ちゃんもいて、近づいて来た猫ちゃんを撫でながら「心臓がドックンドックンいう同士だもんね♪」というとご主人も奥さんも深くうなづきながら納得してくれる猫好き仲間となっている今だ。ご主人もまた、同じような雰囲気を持っていてとても仲良しな夫婦であるが、どこかの主人みたいに?余計なことを言わない方でとても穏やかな方である。そして夫婦そろってのお酒好き!決まりである。
二言目には「私が今まで生きてきた中でも、こんなに“ひどい雪”が何回も来るのは初めてよ!」と言うが、私はその言葉を聞くたびに、私自身がこの地に馴染んでいく気がしてならない。さらに何が一番ありがたいかといえば、仲良しになってくれても一定の線を越えない絶妙な距離感を保っていてくれることだ。この距離感が最高なのである。

そんな奥さんにまた頼んだ。
いい加減というか初めてだが。雪を捨てる場所がなくなってしまったので敷地内に乗用車二台分の雪捨て場を作ってもらった。これで3月の雪まで心配がなくなった。今回も慣れている奥さんは、ちゃっちゃと段取りよく雪捨て場を作ってくれた。何度も書いてしまうが「本当に、カッコイイ!」しか出てこない。
作業後また奥さんに恒例となってしまっているお礼と感謝のハグをし、そのあと重機のことも少しずつ教わっている。
私は「郷に入っても、納得できなければ、郷に従うことはしない変わり者で、震災以来、もうこれ以上、絆されることはないと決めている」が、ここで暮らすための智慧を日々教わり感じていくということ、その智慧を授けてくださるすべてへの感謝は忘れない。
色々あるが、どんなご近所さんがいるかも大事なことだとつくづく思い知った。
もちろん「タダほど怖いものはない」と思っている私は気持ちだけでも、そのほかのお礼もしていると、さらにそのお礼のお礼がやって来たりするのが面白い。しかも決してお互いに無理がないところでできているのがまた気持ちがいい。内地でもどこでも同じなんだろうが、人との巡り合わせというか、付き合い方というか、生き物としてバカな人とは付き合わないと決めている私に、ここは最高の地となりつつある。
私は、ここでまた、もっともっといろんな経験値を上げていく。
お隣さんとの関係も、何もかも、ここの自然が与えてくれているのかもしれない。
そう思うとすべての自然に向かって天に向かってお礼を言いつづけてしまう。

私といろいろなことを話したかったらしい。

ならば私は、私がこれまでに経験して実感したことを、尊敬することが1つでもある限り、あなたの子孫のために話します。あなたの大事な家族のために、話します。

私は、携帯電話を、持たないと決めている。いつかは持たなければならない日がくるかもしれない。それはその時に考えようと思っている。
あの日は、猛吹雪で電話線が切れてしまって電話も繋がらなかった。以前から混線したりしていておかしいとは思っていたが、そんなものだと思っている。それもお隣の奥さんが気づいて教えてくれてわかった。うちは電話が通じない状態だったと。
それでよかったんだと思う。
完璧ではない人間が作ったものも、完璧ではないはず。
今も終わらない震災の時に学んだことは、しっかり身についているとまた確信できた。




おん かかか びざんまえい そわか

おん あぼきゃべいろしゃのう まかぼだらまに はんどま じんばら はらばりたや うん

(改めて書いておこう。
宗教はもはや宗教ではないが「真言の音の響き」は心地良い。)


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by iroha8788 | 2018-02-22 02:22 | そういう時間 | Comments(0)