カテゴリ:尊敬する百姓の手を持つひと( 2 )

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尊敬する百姓の手を持つひとが持ってきてくださったヒョウタンナシの木は樹齢が100年をこえている。100年をこえてもなお実をつける強さを考える。果樹をはじめ木々たちの実りには裏年がある。その裏年を考える。そしてヒグマをはじめ野生動物たちも木々たちの実りに合わせる。それは年月を経て代々つちかってきた動植物たちの智慧と思われる。

私が幼いころ梨農家をしていた人がいた。節になるとたくさんの20世紀、豊水、幸水、長十郎などの丸梨をいただいた。瑞々しい果汁が滴りもっている手がベタベタになるほど糖度が高く、ほかの梨を食べたいとも思わなかった。「自分の年に合わせて作ればいい」とそのひとは言い、年々梨畑を小さくしていった。生活のために「今まで食べさせてもらった梨の木を伐りたおす」とは、どんな気持ちだったのだろう。そして今、梨畑はそのひとがいなくなり更地になった。

梨農家のひとがいなくなり、買ってまで食べたいとも思わなくなった。それが、ここに住むことでお世話になっている、尊敬する百姓の手をもつひとの庭にあるヒョウタンナシにかわり、いただくようになった。このヒョウタンナシがあるテーブルのわきを通るとふわっといい香りがする。野性味あふれる実生苗からそだった実は、甘みと酸味が絶妙で歯ごたえがありとてもおいしい。うちの実生苗はあと14年待たないと花芽があがらない。うまくいって14年後だ。

尊敬する百姓の手を持つひとと一緒に二重の虹を見ながら、うちの庭でできた最初の梨を食べる日が待ちどおしい。



おん。


この写真のヒョウタンナシは、はじめていただいたときに撮ったものだ。この梨の種が実生苗となって今、うちの庭で育っている。




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by iroha8788 | 2018-11-10 05:50 | 尊敬する百姓の手を持つひと

百姓の手を持つひと

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「イモ持ってきたぞ!」と言いながら、はじめて蝦夷地に来たときから付かず離れずの関係がつづいている「尊敬する百姓の手を持つひと」がやってきた。その方の声を聴くと私はいつも走って玄関にいってしまう。

その尊敬する百姓の手を持つひとは、亡くなった主人の父さんとそっくりで、足音から歩く姿、そして顔までも似ている。声はちょっとちがうが、はたらき者というところも似ていて、はじめて会ったときに、義父ちゃんが生き返ったのかと思うくらいだった。

「ここに住む」と決めてからはじめて役所に行き担当の部所へいくと、ちょうどそこに尊敬する百姓の手を持つひとも来ていて偶然会った。そこから移住するにあたって本当に色々お世話になっている。しかし会うのは年に1回か多くて2回くらいだ。要の部分は手を貸すがあとは「勝手にやれ」という感じだ。最高である。恩を着せることなど、この方には一切ない。この放っておいてくれる感覚が本当にいい。そして今の時期になると必ずひと冬分の「ジャガイモ」を持ってきてくれる。

「今年は、キタアカリと男爵と…あと赤いの…名前忘れた。とにかくこの3種類だ」と言って玄関にドンとおいてくれた。お礼を言いながらそのあとは、初冬の庭を眺めながら1年の締めくくりのように今年あったことを話しながら一緒に歩く。

「ずいぶん庭が賑やかになってきたな」
「はい。相変わらず、処分品になった子たちを見つけては迎えています」
「そうか、楽しんでるんだな」
「はい」
「ここの生活はどうだ?うまくいってるか?旦那は仕事うまくいってるか」
「はい。ここは住めば住むほど、いいところです。私たちは、ここを離れませんよ」
「そうか。よかったなぁ。思い切って。本当によかったなぁ。俺もここをそんなに気に入ってくれて、嬉しい」
「はい。今月で住みはじめてから5年目になりましたが、本当に最高です」
「よかったなぁ。いやぁ…よかった。よかったなぁ。ところで、ヒョウタンナシは、食うか?」

「食べます!はじめていただいて食べてから、大好きです。内地の梨はもう食べられません!」
「ハハハ!そうか、じゃあ、もうちょっと霜が降りたら収穫できるから、持ってきちゃる。霜が当たると、うまくなるんだ。今年はヒョウタンナシの当たり年だ。待ってろ!」
「はい! 」
「こっち、ここ見てください。最初にいただいたヒョウタンナシがおいしくて、そのときの種をまいて、ここまで苗が育ちました」
「相変わらずだなぁ。けっこう育ったじゃないか。あと何年で実がなる?」
「えーと…梨の大バカ18年だから、あと14年です。」
「俺、生きてねーぞ!」
「いいえ、生きててもらいます。何が何でも、最初のヒョウタンナシは、必ず食べてもらいます」
「ハハハ。そうか、そうか」

尊敬する百姓の手を持つひとの家の庭には樹齢100年をこえるヒョウタンナシの木がある。先代が内地から移住したときに植えたという。尊敬する百姓の手を持つひとが小さい頃からすでにあって食べていたらしい。尊敬する百姓の手を持つひとは80歳をこえている。しかし、会うたびに若返っている。冗談抜きに若返っているというたびに尊敬する百姓の手を持つひとはいう。
「俺は、はんかくさいだから、年とんねぇんだ」と。

私は、付き合えば付き合うほどこの尊敬する百姓の手を持つひとが大好きになっていく。

おん。


帰り際「昨日の虹は見たか?昨日の虹は、最高だったな。二重になってた」と尊敬する百姓の手を持つひとがいった。もちろん私も見ていた。

さて、いただいた大量のジャガイモで「いももち」のストックを作ろう。ここに住んでから覚えた「いももち」は冬の大事な保存食になる。



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by iroha8788 | 2018-10-27 05:20 | 尊敬する百姓の手を持つひと